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地域包括ケアシステムって何ですか?
未分類2024.08.30
今年度からは地域包括ケアシステムの目指す先にある、「地域共生社会」について様々な分野でご活躍の先生方に地域共生社会についての記事をいただきます。ぜひご一読いただき、今後の社会・地域づくりについてご理解を深めていただけたらと思います。 地域包括ケアシステム部
「地域共生社会」って何?
前橋市長寿包括ケア課 北原 絹代
この夏、お住まいの地域の納涼祭に参加された方はいらっしゃるでしょうか。今でもその時期になると、子どもの頃のわくわくした気持ちとともににぎやかな地元の様子を思い出しますが、一方でお神輿の担ぎ手がおらずお祭りが中止になった地域もあるという話を耳にするたびに、少子高齢化の波と、それに付随する地域力の脆弱化を身近なものとして実感します。
私たちの暮らす日本では、かつてはご近所同士で助け合う「お互い様」の考え方が根づいており、地域行事や冠婚葬祭、困りごとへの支援まで自助・互助の中で行われてきた歴史があります。その中で、共助・公助にあたる社会保障制度は、自助・互助で対応しきれない部分の支援を補完する形で、高齢者、障がい者、児童など対象者ごとに整備が進められてきました。
しかし、近年の核家族化や多様な働き方による生活スタイルの変化、急激な少子高齢化による社会構造の変化により、地域における支え合い(自助・互助)の基盤が弱まり、社会保障制度による支援の比重が大きくなってきています。一方で、複数分野の課題を同時に抱えるケースが増えてきており、「縦割り」や特定の専門分野といったこれまでの狭い視点での支援体制では対応しきれなくなってきていると同時に、社会保障制度を人的・経済的に支える層の負担も大きな課題となっています。
こうした背景を踏まえ、平成28年6月2日に閣議決定されたニッポン一億総活躍プランにおいて、地域共生社会の実現が盛り込まれました。地域共生社会とは「子供・高齢者・障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる社会」とされており、人と人とのつながりを再構築することで、支え合い認め合える、誰もがその人らしい生活を送ることができる社会としていくことが求められています。地域リハビリテーションの定義である「障害のある人々や高齢者およびその家族が,住み慣れたところで,そこに住む人々とともに,一生安全に,いきいきとした生活が送れるよう,医療や保健,福祉及び生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動のすべてを言う。」は、まさに地域共生社会の理念と同義であると言っても過言ではなく、この理念に基づく理学療法士の活動は地域共生社会の実現に大いに貢献するものとして期待されています。
日本理学療法士協会では、多岐にわたる分野に精通し多様なニーズに対応できる人材の育成を目的として、登録理学療法士制度を2022年4月から開始しています。また群馬県でも、地域ケア会議推進リーダーや介護予防推進リーダーの養成などを積極的に進め、地域に関わるスキルの向上を推進しています。これらの取組は、理学療法士が、先に述べたように「専門分野の範疇だけの狭い視点」ではなく、他多職種や行政と連携して多角的な視点から地域課題の抽出を行い、解決に向けて専門性を発揮することのできる人材となることを目指しているものです。
自治体の具体的な施策もまだまだこれからといった段階ですが、認知症においては、課題解決に向けて長期的に寄り添う「伴走支援」や、認知症ご本人の意見を聞き、地域で共有する「本人ミーティング」など、地域共生社会の構築に向けた取組がすでに始まっています。理学療法士もその一員として、地域の状況や動きを注視しつつ、積極的に関わっていくことが求められています。