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■書籍紹介「変形性膝関節症の保存療法」
未分類2024.06.21
著者名:山田英司
出版社:運動と医学の出版社
価格:4,800 + 税
公立富岡総合病院の津金です。経験年数は15年目となり、今まで転職や異動を含め3病院と2施設で従事し、急性期病棟・回復期病棟・療養病棟・老健・通所リハ・デイサービスで働かせていただきました。高齢化に伴い高齢者を診る事が多く、その中で主病名以外に「膝が痛い」と訴える患者さん、利用者さんは少なくなく、身体を触る場所で一番多いのは膝関節でした。
私は変形性膝関節症の痛みに対して最も触る場面がありながら、どの組織が痛くて、なぜ痛くなるのか、また、どんな治療をしたらよいのか確信もなく、患者さんに対して十分な説明も出来ずにいました。そんな疑問や苦い経験を払拭できたのが、今回紹介する山田英司先生著書の「変形性膝関節症の保存療法」です。
山田先生は2021年に52歳をいう若さで他界され、本著が遺作となっています。変形性膝関節症の歩行運動力学に関して、膨大な数のデータや知見を基に作られていて、これだけの変形性膝関節症データを調査した医療者は存在しないと思われる程です。
本書の内容は理学療法のポイントとして「画像で捉えられた所見と痛みの症状は一致しない」「痛みを生じる組織や病態が多く存在する」「痛みの組織を同定しなければ、仮説検証は行えない」「痛みの組織へのどんなストレスがかかっているか、どんな理学療法で解決できるか」の4つを踏まえ、臨床における評価と治療にどのような意味を有しているかを理解できるように記載されています。
著者の熱を感じる部分として、治療方針を考える上で2本の柱があります。1つ目は疼痛を起こしている組織の同定、病態の評価、それに対する「対症療法的理学療法」。2つ目は痛みを発している組織、病態の原因となっているメカニカルストレスを軽減させることを目的とした「原因療法的理学療法」。この2本の柱の重要性を保存的理学療法の究極の目的と説いています。特に「原因的理学療法」の力学的介入は必須とされています。その力学的介入は本書の中に惜しみなく分かりやすく記載されており、力学に苦手意識がある方でも十分理解できる内容となっています。
最後に、本書は山田先生が残してくれた変形性膝関節症の保存療法の考え方を深く学べる書籍であり、加えて75分の力学に関する特典映像が無料視聴できます。臨床で変形性膝関節症に関わる時に、自信を持って介入が出来る一冊で、大変お買い得だと思います。
興味が湧いた方は是非是非、御一読して下さい。