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■理学療法士のワークライフバランスを考える ワークライフバランス部
未分類2024.06.21
「当院の職員のワークライフバランスに対する取り組み ~職員への管理を通して~」
医療法人五紘会 東前橋整形外科病院 小保方 祐貴
東前橋整形外科病院の小保方祐貴と申します。私は現在、診療部長兼診療技術部長として、理学療法士30名、作業療法士5名、計35名のリハビリ科を含む計6科の管理をさせていただいております。今回、「ワークライフバランスを考える」というテーマをいただきましたので、当院のリハビリ科で行っている管理を通してワークライフバランスについて考えていきたいと思います。
以前、源流No.152にて「理学療法管理学を学ぼう」というタイトルで寄稿させていただきました。その中で、「Service profit chain(Heskett,1994)」という概念を紹介させていただきました。これは企業が従業員を大切にすることで、従業員のサービス品質が向上し、その結果顧客の満足度、そして企業収益につながるという考え方です。そのため、管理者として、職員のワークライフバランスを管理するのは非常に重要と考えます。しかし、職員ごとに価値観は様々ですので、職員のワークライフバランスを管理することは困難です。そのため、「ワークライフバランス社会の5つの活動分野」である「仕事・働き方」、「家庭生活」、「地域・社会活動」、「学習や趣味・娯楽等」、「健康・休養」の5つの分野ごとに当院で行っている取り組みをまとめたいと思います。
「仕事・働き方」では、人生の段階に応じた柔軟かつ過重な負担とならない働き方が実現できているかが求められます。当院では、60床の病床に対して35名のリハビリ職員を揃えることで、1日当たりの平均実施単位16.2単位、1カ月当たりの平均時間外勤務時間0.21時間、職員1人当たりの平均有給日数13.58日(取得率90.4%、公休数122日)となり、職員の柔軟かつ過重な不安とならない多様な働き方ができるように努めています。
「家庭生活」では、子育てや介護など家庭事情に応じて、充実した家庭生活を送れているかが求められます。先述の有給取得の推進に加え、子の看護休暇などの特別休暇の整備は当然のことながら、昨年度の育児休暇取得率は男女合わせて83.3%という結果となり、男女とも希望する形で家庭生活を過ごせるように配慮しています。
「地域・社会活動」では、自ら希望するバランスで、地域活動等に参加する時間が確保できているかが求められます。当院では、スポーツチームに帯同する理学療法士が8名おり、先の選抜甲子園では大会期間中に理学療法士1名を出張として派遣するなどの対応をしております。また、地域活動としてウォーキングイベントや各種健康講座などに希望者が参加できるようにしています。
「学習や趣味・娯楽等」では、希望する形で学習や趣味・娯楽等のための時間が確保できているかが求められます。当院では、時間外勤務時間を可能な限り減らす取り組みを行い、先述の通りの時間外勤務時間となっております。また、有志参加による「研究勉強会」や「トレーナー勉強会」、「超音波エコー勉強会」を月1回程度開催し、職員自ら学びたい分野で学べる環境整備をしております。その甲斐もあって、令和5年度では、延べ15名の職員が学会発表を行うことができました。
「健康・休養」では、バランスの良い働き方で心身ともに健康に過ごせるかが求められます。当院では上記の取り組みを行うことで、過去3年間の退職率は5.38%(全国平均15%程度)、入職3年以内退職率は2.1%(全国平均37%程度)の状況となっております。
また、上記のような取り組みを行うことで職員の職場エンゲージメントの指標であるeNPS(Employee Net Promoter Score)がリハビリ科全体で+6.6(医療・介護業界平均-65~-57)という結果となり、当院で行っている取り組みが一定程度、職員に理解されているものと考えます。
現在は、リハビリ科全体としてのワークライフバランスの管理という形となっておりますが、今後は職員個々のワークライフバランスを評価できるように取り組んでいきたいと考えています。