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理学療法アラカルト「リバース(反転)型人工肩関節置換術後のリハビリテーション」
未分類2024.03.04
医療法人相生会 わかば病院 須賀和江
肩関節腱板損傷は60歳以上の方に多く認められ、外的要因(転倒や外傷)などによるもの、内的要因(長年の姿勢や運動パターンが原因)によるものに分かれます。高齢者を対象とする臨床場面ではよくする直面する疾患だと思います。治療方法としては保存療法、手術療法に分かれ、手術療法としては腱板修復術、人工肩関節置換術(従来型の人工肩関節置換術、リバース型人工肩関節置換術)があります。今回はリバース型人工肩関節術後のリハビリテーションについて紹介します。
●リバース型人工肩関節置換術
日本では2014年に認可された比較的新しい手術法です。従来の人工肩関節とは反対に肩甲骨関節側を半球状の金属に置き換え、上腕骨側を受け皿とする構造となっていることで肩関節の回転軸が下方内側に移動すること、三角筋が伸張されることにより腱板が働かなくても三角筋の力で肩関節を挙上しやすいため関節だけでなく腱板機能が低下している方に適応とされている手術法です。
●術後のリハビリテーション
・装具固定期間
当院の場合、手術後約2週間は肩関節脱臼の予防、縫合した肩甲下筋の負担の軽減、三角筋が伸張されることによる三角筋の負担や肩峰骨折のリスクを考えて肩関節装具を着用します。
その間は消炎処置、頸部・手・肘関節可動域練習、頸部・肩甲帯リラクゼーション、脊柱・肩甲帯姿勢調整、体幹の筋力強化から開始しマイルドに他動的な関節可動域練習を実施していきます。歩行能力が低下している方もいるため活動量は維持するよう指導します。また、肩関節伸展・内旋位が禁忌肢位であり、日常生活動作では反対側の上肢で補助するなど動作の工夫点をお伝えしていきます。
・自動運動開始期間
2週間経過後は自動運動を開始。リハビリ内のみからはじめ日常生活での自動運動の量を増やしていきます。その後、徐々に筋力強化をすすめていきます。肩関節だけでなく、肩甲帯や脊柱の可動域制限・筋力低下や姿勢アライメントが崩れている方が多いため、固定期間同様に他動的に関節可動域練習やストレッチ、姿勢調整も継続して行います。また、リバース型人工肩関節置換術では一般の肩関節挙上時よりも肩甲胸郭関節の動きが必要なため、肩甲帯周囲を動かせるように練習していきます。
・日常生活動作使用期間
ある程度自動運動で肩関節挙上ができるようになってきたころから、日常生活関連動作での術側のみでの肩関節の使用を開始していきます。掃除機の使用や雑巾がけなど反対側で補っていたものを徐々に術側のみを使用し、近位から遠位の動作練習を開始していきます。挙上位で固定して実施する洗濯物干し動作も軽いものであれば可能となります。結帯動作は禁忌肢位ではありますが腰椎下方であれば結べるようになります。
当院の場合は高齢者が多く、術後4か月から半年を目安にリハビリが終了となる場合が多いですが従来の人工肩関節の固定や外旋制限期間を考えると早期から動かせることもあり、早期に肩関節の自動可動域の獲得ができ、日常生活動作でも使用できるようになっています。
●参考文献
1)リバース型人工肩関節全置換術適正使用基準 2021
2)岩橋祐介 他:リバース型人工肩関節全置換術症例の肩甲骨の動態評価 日本作業療法士学会抄録集54 2020
3)久保憂弥 他:リバース型人工肩関節後の結帯動作の獲得率と関連因子 日本人工関節学会誌 第52巻 2022