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■書籍紹介
未分類2023.12.01
「希望のつくり方」
著者名:玄田有史
出版社:岩波新書
価 格:836円
理学療法士になって一般病院・スポーツ現場・有料老人ホームなどで幅広い疾患や年齢の対象者のリハビリテーションにこれまで寄り添ってきました。
その中で感じることは、対象者の意思や希望を考えることが何よりも大事なことであるということです。
私たち理学療法士は、ケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人を対象として日々の臨床業務を行っています。その中で対象者の「HOPE」を聞き取ることが重要であると養成校時代から教えられていると思います。しかし実際、対象者の中には病前の状態とのギャップから希望を生み出しにくく見えない未来に気を落とすということが往々にしてあると思います。
皆さんは、そのHOPEというものを有耶無耶にして療法士自身の推測に置き換えていませんでしょうか?日々の経過に合わせて対象者の希望に沿ったリハビリテーションを提供できているでしょうか?
少しでも心の中で思い当たることがあれば、本書を手に取って頂きたいです。本書では、社会学の観点から「希望」というものはどこから生まれているのかが記されています。
本書には希望の作り方として"Hope is a Wish for Something to Come True by Action (with Others)"と述べられています。つまり他者との関係や行動によって希望はつくられるということです。具体的に述べるなら脳卒中や骨折で機能低下が生じた方は急性期において自宅生活や趣味活動を再開することを中々イメージしにくいと思います。徐々に回復することで、一人で起居ができ、起立ができ、歩行ができるようになると「また元の生活がしたい」「趣味を再開したい」といった希望を作ることができると思います。
療法士は対象者が希望を持てるようにリハビリテーションによって対象者の行動を主体的に促していく必要があると考えます。つまり対象者の方から「〇〇を目指したいから□□をやってみたい。」と思って貰えたら希望を叶えることに大きく近付くでしょう。また経過に合わせて、対象者に成功体験を積んでもらい、これまでの経過を顧みてどれだけ良くなったのか内省してもらうことも重要です。
ただし、注意として対照的に「先が見えすぎても」希望は失われてしまうようです。皆さんもこれから先の将来が分かりきっていたら、まるで単純なゲームをしている様な退屈な気持ちになると思います。つまり「わくわくする何か」が希望には必要なのかもしれません。
『遊びのある社会こそ、創造性は生まれますし、希望もつくりだせるのです。』
と本書では締められています。
対象者が明るく希望を見出せるために、我々はもう少し対象者がワクワクする様な関わりやリハビリテーションが必要なのかもしれません。