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■ワークライフバランスを考える
未分類2023.12.01
「仕事と大学院の両立」
医療法人樹心会 角田病院 リハビリテーション部 荒木海人
私は3年目に群馬パース大学大学院に入学しました。同大学の卒業生で、卒業後も研究を手伝っていただくことがあり、担当教授からのお誘いがきっかけです。教員になることが目標であり、一つのステップとして大学院は考えていたので大変喜ばしいことでした。
進学について上司にも相談し、新たに奨学金制度を作るなど挑戦しやすい環境を整えていただきました。しかし、当院では前例がなく仕事と大学院をどのように両立していけば良いのか全くイメージがつきませんでした。週2回研究日と土曜授業があるため休日の固定や、授業も夜間行われることから、時間外業務も行えませんでした。
進学してからは、精神的にも身体的にも苦しい時期もありました。勤務後に21時半まで授業を受け、研究活動を行い、帰宅は23時~24時という日がほとんどでした。また、休みは授業と研究日に充てているため、しっかり休めていませんでした。日々の業務も処理できず溜まった書類などは朝早く出勤したり、昼休みを活用するなど、両立できていたとは言い難い状況でした。今となっては、良くなかったと反省しており、間違った工夫の仕方だったことは言うまでもありません。
ここまでの話だとワークライフバランスとかけ離れていると感じる方もいるかと思います。
内閣府が定めた憲章では、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義しています。簡単に言うと「仕事」と「仕事以外の生活」との調和を取り、その両方を充実させる働き方、生き方と言えます。
当時苦しいと感じていたのは授業や研究が「仕事以外の生活」になっておらず、仕事の延長という気持ちを持っていたことが原因でした。仕事は勤務調整をしていただき、大学院に十分時間を充てられて無事に修了でき、調和が図られ充実した生活だったと今では思えます。また、大学院では物事をより論理的に考える力が養えたため、仕事も評価していただき、結果として役職に任用していただけました。
これらの経験を通し、大学院を検討している方に、次のご提案をさせて頂きたいと思います。
1つ目は、長期履修制度の活用も検討してみてください。研究や授業が「仕事以外の生活」であったとしても、睡眠時間が削られるような生活では作業効率が低下し、お互いに悪影響になります。少しでも時間的余裕を作った中で進学することで、双方に好影響を与えられるようになると考えます。
2つ目は、ワークライフインテグレーションの考え方を持つようにしてください。ワークライフバランスの発展的な考え方で、ワークとライフに明確な線引きをしてバランスをとるのではなく、ワークとライフを統合して考え、両方が充実することで人生が豊かになる、という考え方です。大学院での学びを通し、マネジメント能力が向上して役職についたり、より科学的な理学療法が提供できたり、新しい領域の仕事にチャレンジできたりなど、仕事に好影響を及ぼすことが理想的です。
日本の長時間労働の問題が、ワークライフバランスを間違った視点でとらえさせがちですが、今後大学院に挑戦しようか迷っている人は、ぜひ前向きに物事を考え、仕事も生活も充実させていただきたく思います。