一般の皆様へ
会員の皆様へ
■理学療法アラカルト
未分類2023.12.01
『Shared decision making(SDM)~患者と医療者の合意形成に向けて~』
●SDMとは
リハビリテーションでは、患者が日常生活を再獲得するために、病態や動作など客観的な評価に加え、病前生活やこれからどんな生活を希望するかなど、患者の希望や意向を把握することが求められます。また患者の価値観や生活背景、自宅環境や介護者の有無によっても治療方針や治療内容が異なります。その希望や意向を反映させ、患者と医療者がともに治療を決定する方法のひとつにSDMがあります。
SDMは臨床場面で患者と医療者との間に治療に対する認識の相違が生まれないよう行われる手法です。治療内容の決定だけではなく、治療の決定に患者自身が参加する意志を持つこと、医療者から患者への情報の提示方法、情報を提示する際の患者の参加など、治療決定までの過程が重要とされています。
●EBMとSDMの関係
EBMは「臨床研究によるエビデンス、医療者の熟練・専門性、患者の価値観・希望、そして患者の臨床的状況・環境を統合し、より良い患者ケアのための意思決定を行うもの」、「個々の患者のケアに関する意思決定過程に、現在得られる最良の根拠を良心的、明示的、かつ思慮深く用いること」など意思決定の過程で用いられるものとされている。
EBMは医療者を主体とし、SDMは医療者と患者の両方を主体とする概念ですが、ともにより良い意思決定を目指すもので、その過程や留意点など多くを共有しています。EBMの知識に加えてSDMの意識を持ち、患者と協力することができれば、エビデンスを活用することで臨床的な不確実性を減らせることも可能になります。
●おわりに
臨床場面では様々な意思決定を行う場面があるかと思います。患者にとって最適な根拠に基づく医療(evidence based medicine:EBM)を提供することは容易ではありません。以前病院で働いている際に、私も日々悩みながら患者と関わっている中でSDMを知りました。現在は保険外リハビリ施設で働いており、病院とは違う環境ですが、利用者とのコミュニケーションを通して、個々の希望や目標達成に向けてSDMの考えを参考に対象者とともに意思決定を行っています。患者や利用者との意思決定で迷っている方はぜひ一度SDMを調べてみてはいかがでしょうか。
●参考・引用文献
1)中山健夫:これから始める!シェアード・ディシジョンメイキング 新しい医療のコミュニケーション、第1版、日本医事新報社、2017、P1-20,131
2)中山健夫 他:PT・OT・STのための診療ガイドライン活用法、第1版、医歯薬出版株式会社、2017、P85-88