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未分類2023.09.01
「おじいちゃん、早くおうちに帰ってきてね」
「お母さん、リハビリの人の言うことをよく聞いて頑張るんだよ」
毎日のようにリハビリ室や病室で飛び交っていた、当たり前だと思っていた会話や光景が、2020年から当たり前ではなくなりました。
誰にも予想できなかった未知のウイルスによって、患者様とご家族、そしてセラピストの心の支えを繋いでいた糸が切れたように記憶しています。
私は2017年に理学療法士の国家試験に合格し、同年4月に現病院に入職しました。
学生時代の私はとても優秀とは言える成績ではなく、定期試験の度に追試やレポートの再提出が当たり前でした。そんな私が、初めて患者様に触れた実習で、私の「理学療法士観」が一変しました。
「この人がどのような人生を歩んできたか、若い頃にどんな仕事をしていたか。家族関係はどうか、どんなものが好きで趣味は何か。理学療法士はそこまで理解して、関わるべきだと思う。」指導に当たって下さった現職場の理学療法士の先輩が伝えてくださった言葉は、今でもずっと私の指針になっています。理学療法士を目指す理由が曖昧であった私が、「理学療法士になりたい」と強く思った経験でした。
今、目の前に患者様として関わっている人は、誰かに愛されて育った人であり、今誰かにとって大切な存在であること。
毎日のように病院や医療施設で従事していると、多くの患者様に関わることが当たり前になってしまいます。しかし、今私が関わることができている目の前の患者様との時間は、その人を大切に思うご家族や知人たちが叶わない瞬間です。
少しでも顔が見たい、直接会話がしたい、それが叶わない人たちがいる反面、私たちはその人たちに代わって患者様と直接関わることができる仕事に従事していることを忘れずにいたいと思います。
「今、自分がやっているリハビリを、ご家族やキーパーソンの方が見て、この人に担当してもらえて良かったと思っていただけるだろうか。」至極シンプルなこの問いが、医療従事者の資質を問うクエスチョンであると信じています。そこに必要なのは治療技術や知識よりも、「患者様」に真摯に向き合い、良くしたいという姿勢や想いが伝わるのだと思います。これからの理学療法業界を担っていく皆様には、患者様に向き合う姿勢を大切にして頂き、一人でも多くの患者様、ご家族を救うことができる人材になって欲しいと思います。
このような機会をいただいたことに深く感謝申し上げるとともに、私自身も初心を忘れずに明日以降も目の前の患者様に最善を尽くしていきたいと思います。