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理学療法士が知っておきたい社会保障制度
未分類2023.09.01
「育児休業を取得してみて ~男性の立場から~」
群馬大学医学部附属病院 浅野翔平
13.97%。厚生労働省の「雇用均等基本調査」による、令和3年度の男性育児休業取得率の数字です。令和2年度以前は取得率10%以下であったことから、男性の育児休業取得率は増加傾向にあると言えますが、女性の育児休業取得率は10年以上の期間、80%以上であるのに対し、圧倒的に低水準です。厚生労働省の資料によりますと、男性が育児休業制度を利用しなかった理由は、「収入を減らしたくなかった」という回答が最も多かったようです。
私は昨年に第二子(次男)が生まれ、第一子(長男)出生後は育児休業を取得しなかったのですが、今回は次男出生直後から約1ヶ月の育児休業を取得しました。今回私が育児休業を取得し良かったと感じた点等を、体験談も交えてお伝えできればと思います。
出生後の行政手続きや新生児を自宅に迎え入れる準備、必要物品の買い物等、赤ちゃんが産まれた後は何かと慌ただしいです。しかし、出産を終え身体的にも精神的にも疲弊している女性が、これらの準備を行うことは中々大変であり、男性の協力が必要不可欠です。男性側も働いている中で時間を捻出するのは大変ではあると思いますが、育児休業を取得していればスムーズに対応ができ、実際私も余裕を持ってこれらの手続きや準備を行うことができました。
母子が無事退院し、自宅での生活が始まります。第二子とは言え、新生児の育児は久しぶりであり、慣れるまでには少し時間を要しました。長男出生時は長男の育児にのみ集中できましたが、今度は長男の面倒を見ながら赤ちゃんの世話も行うという慌ただしい生活が待った無しでスタートしました。例えば朝のスケジュールですと、起床したら朝食を作り、長男を食事させ、その間に保育園へ送る準備、洗濯、次男のオムツ替え、着替え、食器の洗い物、準備を終えたら長男を保育園へ送る、といったようにやることは山積みです。仕事においても、マルチタスクを効率的に処理するには慣れや時間も必要です。2人分の育児というマルチタスクを慌てずこなす準備期間としても、育児休業は最適でした。
今回、育児休業を取得して最も良かった点は、家族と過ごす時間がしっかりと取れたことでした。育児に対する不安やパートナーのサポート不足等により、母となった女性は孤独感を感じやすく、産後うつ病のリスクにもなりえます。また、上の子も突然やってきた赤ちゃんへの接し方に戸惑い、自身への注目も少なくなることから「赤ちゃん返り」が始まることがあると言います。そういった点では、育児休業のおかげで妻と育児に関しての喜びや不安を共有できる時間が増え、兄となった長男のメンタルヘルスケアもじっくり行うことができ、家族の絆がより一層深まったと感じています。私にとって育児休業は大きな財産となる期間でした。育児休業取得に際し、ご協力いただいた職場スタッフの方々にはこの場を借りてお礼申し上げます。
支出が増えやすい出生後に育児休業を取得することは、確かに一時的に収入が減り、生活・家計が圧迫される側面もあり、育児休業制度を利用しない理由として理解できます。しかし、私個人としては、男性が育児休業を取得することはそれ以上にメリットがあると実体験から感じました。男性の育児休業取得率が今後も増加し、男女共に育児に前向きな社会となっていくことを願います。