一般の皆様へ
会員の皆様へ
理学療法アラカルト
未分類2023.09.01
「家族中心のケアについて」
群馬大学医学部附属病院リハビリテーション部所属、理学療法士の風間大輔と申します。小児リハビリテーションに興味があり、2013年に理学療法士となり、現在臨床経験年数は11年目となりました。当院の小児リハビリテーションは「明るく健やかな育ちを支える小児リハビリテーション/急性期から地域福祉への架け橋」というポリシーを掲げ、患児とその家族、院内の小児科医師や看護師、保育士、特別支援学校の教員、また院外の訪問看護ステーションスタッフや通所デイサービス職員、保育士、特別支援学校の教員、相談員さんと、連携し支援にについて考える機会が多くあります。
小児リハビリテーション分野に限らず、様々な分野で患者やその家族、他施設から、または他職種から理学療法士としての意見を求められる機会があるのではないでしょうか。根拠に基づいた情報を提供することは大事だと思いますが、その情報が誰にでも当てはまる“Best”ではないかもしれません。
今回は“Family – Centered Care(家族中心のケア;FCC)”という考え方を紹介したいと思います。FCCとは、「患者、家族、医療従事者の間で相互に有益なパートナーシップを築き、患者の人生のおける家族の重要性を認識したうえで、医療の計画、提供、評価を行うアプローチである」1)とされます。FCCの基本原則を要約すると、①患者や家族の希望が医療計画に取り込まれる、②ケアの選択は子どもや家族が選択しやすいもの、③偏りのない情報提供で意思決定に家族が参加する、④子どもの発達段階に合わせて公式または非公式の支援情報を提供する、⑤ケア提供のみでなく、プログラムの開発・実施、医療施設の設計や製作などあらゆる段階で患者・家族と協働する、⑥個々の患者や家族の強みを認識し、活かすこと、そして自信をもってその強みを活かすことに参加できるようにすること、とされています。
例えば、家族に合わせた診療プランとして、乳幼児の兄弟がいて通院に時間が割けないが、通院リハビリテーションが必要な児の場合には、家族が協力できる通院頻度を保ち、その間は自宅で可能な体操の指導をしたり、特別支援学校の先生と連携して授業や活動での運動発達の促通へ働きかけることもできるかもしれません。また情報提供によって生活のイメージをする方法として、自宅療養する患者への退院時の補装具などの情報提供において、家族の協力状況や住宅環境を踏まえたうえで、複数の歩行器を選択肢として紹介し、家族とともに決定してもらうと本人だけではなく家族もイメージしやすいかと思います。
当たり前と感じる方も少なくはないかもしれません。4月から理学療法士として働き始めた方も、臨床業務で活躍している時期だと思います。支援には多職種で話し合い、ケアプランをたてるため、様々な資格を持つ専門家が意見交換をすると思います。私たちが理学療法士として、患者に携わる際に、機能面だけでなく患者の意思や希望を取り込んだ計画や支援の立案に協力し、そしてわかりやすい支援の選択肢を改めて考えてみてはいかがでしょうか。
引用文献:
1)Committee On Hospital Care and Institute For Patient And Family – Centered Care , 2012 , “Patient – and family – centered care and the pediatrician’s role” , American Academy of Pediatrics , 129-2;394-404