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理学療法アラカルト
未分類2023.03.08
「腰痛予防について」
群馬医療福祉大学リハビリテーション学部 新谷益巳
国民の健康状況を把握するために、厚生労働省は国民生活基礎調査(昭和61年を初年とし、3年ごとに実施)の中(「Ⅲ世帯員の健康状況」)で実施しています。2019年の結果をみると、病気やけが等で自覚症状のある者(有訴者)は人口千人当たり302.5(有訴者率)となっています。男女別にみると、男性270.8、女性332.1で女性のほうが高くなっています。男女別の症状では、男性で「腰痛(91.2)」の有訴者率が最も高く、次いで「肩こり(57.2)」、女性で「肩こり(113.8)」、「腰痛(113.3)」が同等で高く、次に「手足の関節が痛む(69.9)」となっています。この結果から、腰痛の有訴者が多いことが伺えます。
業務上疾病に関する調査では、腰痛が全体の約6割を占めています。医療・介護職種を含む「保健衛生業」における業務上疾病では、腰痛が81%に上り、予防的対策が急務となっています。厚生労働省は「職場における腰痛予防対策指針」を示し、これまで様々な取り組みが実施されています。
日本理学療法士協会では、理学療法士が自らの専門性を発揮し、全国的な医療・介護施設での腰痛予防・労働安全に貢献することを目的として、「2020 職場における腰痛予防宣言!」を行い、腰痛予防に向けた取り組みが実施されました。この取り組みには、3つのMission(Mission1はポスターを施設内に掲示、Mission2は各施設内で、職員に向けて腰痛予防講習会を実施、Mission3は施設の協力のもと、職場のリスク見積もりと改善提案を行う)があり、全て達成することで金メダルの施設として認定されます。2020年1月6日~2022年3月25日までに、全国で130施設が取り組み、5,645人に貢献したことを報告しています。
今年度は「2022 職場における腰痛予防宣言!」として、2022年9月1日~2023年3月24日まで実施しています。2022年12月8日現在では、金メダルと認定された施設は19施設、銀メダルと認定された施設は57施設となっています。理学療法士としての立場から、このような取り組みから活躍できる場を広げることは非常に重要なことであり、「保健衛生業」だけでなく、他の業種においても理学療法士の専門性を生かす場として広がることが期待されます。